1950s - mid-1980s
オアハカン ウッド カーヴィングのはじまりは、アラソーラ村のマヌエル ヒメネス(1919-2005)が作りはじめた彩色木彫り。アニリン染料を使った鮮やかな彩色と絶妙な造形センスが特徴で、ツーリスト相手の民芸品店などで売られていました。1940年代からときおり木彫りを作っていたマヌエル ヒメネスが、木彫り製作を専業としたのは1957年。木彫りに専念できるようになったマヌエルは、実験と工夫を繰り返しながら動物や聖人像など多くの作品を作り出していきます。これがオアハカン ウッド カーヴィングの本格的なスタート地点です。
1960年代おわり、オアハカン ウッド カーヴィングの発展に大きな役割を果たすことになる2人、サン マルティン ティルカヘーテ村のイシドーロ クルース(1934-2015)と、ラ ウニオン テハラパン村のマルティン サンティアーゴ(1931- )も彩色木彫りの製作をはじめます。マヌエル、イシドーロ、マルティン、この3人の先駆者が住む村は、のちにオアハカン ウッド カーヴィングの3大産地として知られるようになりますが、それはまだ先のこと。
3人に続いて、マルティン サンティアーゴの兄弟やいとこ、イシドーロ クルースが木彫りの作り方を教えた村人たち、マヌエル ヒメネスの息子たちなど、木彫り製作をはじめる人々がゆるやかに増えていきます。とはいえ1985年頃までは20人ほどがオアハカン ウッド カーヴィングに携わっていただけでした。
この初期のオアハカン ウッド カーヴィングの特徴は、ほとんどの作品がアニリン染料で彩色されていること。染料は木に染み込むので、彩色しても木の質感が残り、色鮮やかでありながらも素朴な味わいの作品に仕上がります。褪色しやすいため、時を重ねてヴィンテージ感を楽しむことができるのもアニリン染料で彩色された作品ならでは。