オアハカン ウッド カーヴィング(メキシコ・オアハカ州でつくられる木彫り)の牛。シンプルな造形とアニリン染料で彩色された素朴な作風は、1960〜70年代につくられた初期オアハカン ウッド カーヴィングのようですが、歴とした2017年の作品です。
オアハカン ウッド カーヴィング初期の作風のまま作品を作りつづけている職人はわずか数人になってしまいましたが、そのうちのひとりがこの「ピンクの牛」の作者。農業のかたわら木彫り製作をつづけています。
*目立ちませんが、両角の根元に補修痕があります。
*アニリン染料は19世紀に発明された合成染料。現在のオアハカン ウッド カーヴィングはアクリル絵具による彩色が主流ですが、1980年代中頃まではほとんどの作品がアニリン染料で彩色されていました。彩色面をコーティングするアクリル絵具と違って、アニリン染料は材料に染み込むので、彩色後も表面に木の質感が残ります。そのため、より素朴な味わいのある作品に仕上がります。また、アニリン染料は褪色しやすいため、時を重ねることでヴィンテージ感を楽しむことができます。色によって褪色のスピードに差がありますが、鮮やかさが数年で落ち着き、その後も徐々に褪せていきます。日光などの環境条件によっては30〜40年で彩色がほとんど失われることも。素朴さとエイジングを楽しめるのがアニリン染料で彩色された作品の特徴です。