LABRAVA

メキシコノート 0048

世界一幅が狭い家

世界一幅が狭い家
Uruapan, Michoacan, Mexico, 2009

世界一の超高層ビル、ドバイのブルジュ・ハリファ。その高さ828メートル。標高599メートルの高尾山よりも遥かに遥かに高くそびえる。安定感のないひょろりと空に突きたったさまをテレビや新聞で見ていると、登ったわけでもないのにくらくらする。いかにも世界一でございます、と迫ってくるような雰囲気に気圧される。と、そこへいくとミチョアカン州ウルアパンに楚々と建つ家は安心。

「世界一幅が狭い家」である。間口1.42メートル、奥行き10.2メートル。こちらも安定感のなさではブルジュ・ハリファと変わりないが、きちんと視界におさまるのでなんとなくほっとする。この家、3階建てとはいえ、建坪ざっと4坪強の細長いスペースにベッドルームやキッチン、バスルームと、住に必要なパーツがそろっていて、極限まで切り詰めたコンパクトな暮らしは驚きである。実は、世界にはこの家より間口の狭い家はある。でも間口がより狭くても、奥へ入ると広くなっていたりして、奥まで幅の狭いこの家は、やはりめずらしい。そのうえ、屋根の先にしつらえたヘリコプターのおもちゃやメルヘンな小窓が、心なごませる。たいそうな威厳に押しつぶされそうになったとき、スケールの大きなものにめまいがしたときには、この家のことを思い浮かべると人心地がついていい。