
メキシコのマジョリカ焼は、16世紀にスペインからメキシコに製陶法が伝わり、プエブラやグアナファト、メキシコシティなどでつくられるようになった陶器です。やきものの表面に錫釉を施して白地にし、その上に酸化コバルト・酸化銅などで絵付けしてつくられます。その技法は、オランダのデルフト焼、フランスのファイアンス焼、イタリアのマジョリカ焼、スペインのタラベラ焼などとほぼ同じ。これらの陶器は国によって名称こそ違いますが、もともとはスペインでつくられていたイスラム起源の陶器が、15~16世紀にイタリアで盛んになり、その後ヨーロッパ各国に広がってつくられるようになったものです。
メキシコのマジョリカ焼も、当初はスペイン製品を手本につくられていました。しかし、次第にメキシコ人の陶工たちの感性と好みを反映したものに変化していき、交易で伝わった中国・日本の磁器の影響も受けました。そして、イスラム、スペイン、中国・日本、メキシコの文化が入り交じったメキシコならではのマジョリカ焼となったのです。