アレブリヘスとは?

メキシコ オアハカ アレブリヘス

メキシコのオアハカ州でつくられている木彫り、これを「アレブリヘス(Alebrijes)」と呼ぶ人もいます。本当は「リ」にアクセントが付くのでアレブリーヘスと表記するのがいいかな、と思いもしますが、アレブリヘスでいきます。アレブリッヘスでもいいのですけれど、これだとなんだかイタリア語風になってしまいますし。ちなみにアレブリヘスは複数の場合。単数ならアレブリヘ(アレブリーヘ)になります。

カエル アレブリヘス
さて、いずれにしてもこの「アレブリヘス」という呼び名は間違いなんです。

コヨーテ アレブリヘス
じゃあ、なんて呼ぶの? と問われても、答えに窮してしまいます。

フクロウ アレブリヘス
実はオアハカの木彫りには名前がありません。

犬天使 アレブリヘス
観光客向けの工芸品として1950年代につくりはじめられ、決まった呼び名がないまま有名になってしまったものですから。

ハリモグラ アレブリヘス
でも、「あれ」とか「木のヤツ」とかそんな風にばかり呼んでいるわけにもいきません。

バッファロー アレブリヘス
で、単純に「オアハカの木彫り」とするか、とも思いましたがあまりに味気ない。

悪魔 アレブリヘス
そこで、「オアハカの木彫り」を、ただ英語にしただけではありますが「オアハカン ウッド カーヴィング」と呼ぶことにしました。

OAXACAN WOOD CARVING THE MAGIC IN THE TREES
こんなふうに本のタイトルにもなっているし。
OAXACAN WOOD CARVING – THE MAGIC IN THE TREES(Chronicle Books) 有名作家をほぼ網羅しているので、オアハカン ウッド カーヴィング入門用として便利です。

CRAFTING TRADITION THE MAKING AND MARKETING OF OAXACAN WOOD CARVINGS
こちらはアイオワ大学人類学部教授Michael Chibnik氏の著作。やはり「オアハカン ウッド カーヴィング」ですね。
CRAFTING TRADITION – THE MAKING AND MARKETING OF OAXACAN WOOD CARVINGS(University of Texas Press) オアハカン ウッド カーヴィングについて詳しく知りたい方はぜひ読んでみてください。

犬 アレブリヘス
でも、なぜ「アレブリヘス」と間違って呼ばれることがあるのでしょうか。

もともとアレブリヘというのは、メキシコシティの有名な張り子細工一家、リナーレス ファミリーが1930年代からつくっている奇妙な怪物の呼び名です。

アレブリヘス リナーレス
これがリナーレス ファミリーのアレブリヘ。

「アレブリヘのはじまり リナーレス ファミリー」 ›

1980年代後半、あるバイヤーが、このリナーレス一家のアレブリヘをモデルにしたウッドカーヴィングをオアハカの職人につくってもらいました。これが「アレブリヘ」という名で紹介されて大人気に。ネコ、アルマジロ、カエル、コヨーテなどと同様に、この「アレブリヘ」もオアハカン ウッド カーヴィングの定番モチーフとしてたくさんつくられるようになりました。

ブタ アレブリヘス
でこのころから、「アレブリヘス」とはオアハカン ウッド カーヴィング全体を指す呼び名である、と一部の人に勘違いされるようになってしまいました。

オポッサム アレブリヘス
ただ単純に「アレブリヘス=オアハカン ウッド カーヴィング」だと誤解した人が多かったのか、あるいは「オアハカン ウッド カーヴィング」なんて呼ぶより「アレブリヘス」のほうがエキゾチックだしキャッチーだし売りやすいしなにかと便利でいいじゃないか、と誰かが企んだのか、理由はわかりませんけれど。

ネコとかイヌとかカエルとかウサギとかガイコツや悪魔とかと同じように、オアハカン ウッド カーヴィングのモチーフのひとつとして定着したアレブリヘ。どんな姿かというと。

アレブリヘ
これとか。

アレブリヘス
これとか。 大きな頭で2~3頭身、長い角、大きな耳と羽と尻尾、長く突き出した舌。この形をしたものがアレブリヘです。

赤アレブリヘ
「アレブリヘス=オアハカン ウッド カーヴィング」と勘違いしている人対策として、場合によっては以下のような展開で「火星人」と呼ぶことも。
観光客「これなあに?」
オアハカの職人「アレブリヘだよ」
観光客「だからアレブリヘスのなあに?」
オアハカの職人「だからアレブリヘだってば!」
観光客「アレブリヘスなのはわかってるって。アレブリヘスのなにかを知りたいんだよ」
オアハカの職人「うーん、えーと、これは・・・、火星人、だヨ」

このさい、興味本位で「アレブリヘス」という呼び名について、作家に聞いてみましょう。

イシドーロ クルース
オアハカン ウッド カーヴィング界の最古参作家、イシドーロ クルースさん。「わたしはただ木彫りと呼ぶ。わたしの作品は『アレブリヘス』ではないよ」

ミゲル サンティアーゴ
今や大人気のミゲル・サンティアーゴさん。子どものころ、オアハカン ウッド カーヴィングの創始者マヌエル・ヒメネスの家のごみをあさり、捨てられた木片などを見て研究して、独学で技術を磨いた強者の意見をきく。

ミゲル サンティアーゴ 名刺
「わたしの名刺を見て。彩色された木彫りアート、とあるだろ。『アレブリヘス』ではないよ」

そうか、名刺で確かめてみよう。ほかの作家の名刺も見てみることに。

アレブリヘス 名刺
「木彫り作家」「木製の工芸品」「木製の人形」などなど呼び名はまちまち。いろんなことが書いてあるけれど、だれも「アレブリヘス」作家とは書いていません。

メキシコ オアハカ
とはいっても、村のなかでは「アレブリヘス」の看板を出す家を見かけることもあります。はて? あっ、こんなに村の外れに来てしまうと、看板どころか家もありませんけど。

イシドーロ クルース メキシコ オアハカ
再びイシドーロさんに水を向ける。「『アレブリヘス』ということにしておけば、『アレブリヘス=オアハカン ウッド カーヴィング』と勘違いしてやってくる観光客に売りやすい、そういうことじゃないか~」

動物 アレブリヘス
実際、イシドーロさんをはじめとする良識ある作家は「アレブリヘス」と呼ばれることをすごくイヤがっているんです。あれは北アメリカ人が勝手に呼びはじめたんだ、と言って。それに、モチーフとしての「アレブリヘ」もつくっていませんし。

ウサギ アレブリヘス
このように間違って「アレブリヘス」と紹介されてしまうこともあるオアハカン ウッド カーヴィング。

アルマジロ アレブリヘス
ほかにも、まことしやかに「サポテコ族の」「伝統的な」「オモチャ」とか、「祭壇に飾る」「守り神」「魔除け」などと紹介されることがあるんですけれど、売らんがためのウソです・・・。

さて、 オアハカン ウッド カーヴィングについてもっと知りたくなってきた方は、

アレブリヘス 展
ぜひ「Oaxacan wood carving 進化するメキシカン・フォークアート」展へ。*終了しました。

アレブリヘス 写真集 本 販売
そして、こちらの「Oaxacan wood carving 進化するメキシカン・フォークアート」展の図録をお求めください。オアハカン ウッド カーヴィングのことをちょっと説明してみましたので。オールカラー32ページ写真満載。*完売しました。

 

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