LABRAVA

メキシコノート 0038

テネハパ村

メキシコ・チアパス州マヤ族の村テネハパの十字架
Tenejapa, Chiapas, Mexico, 2009

メキシコ・チアパス州サン クリストバル デ ラス カサス周辺に点在するマヤ系先住民の村のひとつテネハパ。山あいの小さなツェルタル族の村で、中央部を川が流れるのどかな雰囲気ながら、村の規模のわりには中央広場は広くてきちんと整備され、こぎれいな様子である。中央広場に隣接する教会堂には、土台の下にたくさんの銀貨が埋められていたとかというゴージャスな言い伝えも残る。その教会堂には、村の守護聖人サン イデルフォンソが祭られているのだけれど、入って左手の聖人サンタ ルシアも村びとのあつい信仰を集めている。テネハパ村の女性と同じ民族衣装を着たサンタ ルシアに、織物が上手になりますように、と祈る村の女性たちが絶えないからだ。織物のさかんなテネハパ村らしい。

ところで、この教会堂のそばで墓地を探してみても見当たらない。それもそのはず、周辺の村々のなかでテネハパ村だけが墓地をもたないのである。テネハパ村では、人が死んだら家の敷地内に埋めてしまう。これなら死んでもさびしくなんてないだろう。死んでからもずっといっしょに暮らせるというのもいいかもしれない。ところが、埋葬したところに十字架もたてないし、目印になるような石を置いたりもしないから、時が経てばどこにだれが埋められているかわからなくなる。だから知らずに人が眠っているすぐそばにゴミを捨てたりするんだ、とほがらかに話すテネハパの人の言葉をききながら、だんだんに忘れられながら自然にかえっていくのも悪くない、と思った。