LABRAVA

メキシコノート 0031

モナルカス・モレーリア

Morelia, Michoacan, Mexico, 2001

ミチョアカン州東部の森には、カナダ、アメリカ北部から数百万匹ものモナルカ蝶が越冬のために集まってくる。ミチョアカンの森で冬を過ごし、春に旅立った個体の4・5世代後の子孫が、翌年の秋、同じ森に戻ってくるのだそうだ。そんな大胆で不思議な渡りをすることはわかっているけれど、詳しい渡りの方法や理由についてはまだまだ謎も多いらしい。しかし、祖先が越冬した見たこともない森に、4000kmも旅して戻ってくるのだから、小さな体に秘められた種の神秘に驚いてしまう。モナルカ蝶がミチョアカンにやってくるのは、図らずも死者の魂が戻ってくるとされる死者の日と同じ時期なので、モナルカ蝶に死者の魂を重ねて思いを寄せる人々もいると聞く。

ミチョアカン州のシンボル的な存在のこのモナルカ蝶、重要な観光資源にもなっている。観光局のマークをはじめ、Tシャツなどのお土産物、地酒のラベル、タクシーのボディなど、いたるところにモナルカ蝶は描かれ、フォークアートのモチーフとしてもよく使われている。そして、州都モレーリアに本拠を置くサッカークラブの名称も「モナルカス・モレーリア」。1924年に創設された当時は「黄金」というゴージャスなクラブ名だったけれど、何度かの改名を経て1999年に現在のClub Atletico Monarcas Moreliaになった。「モナルカス」というクラブ名、なんとなくきれいな試合運びや華麗なプレイを期待できそうな気はするけれど、どうも強そうなイメージではない、とずっと考えていた。でも、と思う。モナルカ蝶のとてつもない長旅を成し遂げる体力、ときには気流を利用して進む賢さなどは「考えて走る」お手本のようで、クラブ名としてなんともふさわしいではないか。そんなふうに考えると、街の郊外キンセオ丘にあるホームスタジアム、エスタディオ・モレーロスの清々しい空気のなかで、「モナルカス」がいかにも力強く生き生きとしているようにも見えてくる。